Episode_4

実務であった
「病院前救急医療」に、
学問として向き合う決意。

インタビューの様子

萱沼 実Minoru Kayanuma

2018年3月 救急システム研究科
救急救命システム専攻 修士課程 修了
2021年3月 救急システム研究科
救急救命システム専攻 博士課程 単位取得退学
2022年3月 国士舘大学大学院 博士(救急救命学)

萱沼 実さん

萱沼 実Minoru Kayanuma

2018年3月 救急システム研究科 救急救命システム専攻 修士課程 修了
2021年3月 救急システム研究科 救急救命システム専攻 博士課程 単位取得退学
2022年3月 国士舘大学大学院 博士(救急救命学)

生まれ育った山梨で、家族、そして地元の方々を守るために。消防士として日々奔走してきたという、萱沼さん。着実にキャリアを積み、指導者という立場へのキャリアチェンジをきっかけに国士舘大学大学院に入学します。これまで実務として関わってきた「病院前救急医療」を研究対象として捉え、向き合う日々。そこから、どんな成果を得ることができたのか、詳しくお伺いしました。

指導者となるために。
救命救急を学術的に学びたい

国士舘大学大学院を志した、
きっかけを教えてください。

消防士として20年以上のキャリアを積んだ後、2015年に指導救命士の資格取得のための研修を受けたのですが、その時に湧いた向学心が、すべてのきっかけです。点滴を打つ、心肺蘇生を行うなどといった救命のためのスキルは身につけていましたが、それらの内容を指導する立場になるのであれば、きちんと専門的な知識を身に付けたい、学術的に学びたいと考えるようになったのです。そこで志したのが、国士舘大学大学院。病院前救急医療という分野でトップランナーを走る国士舘に行きたい、世界的に名だたる田中秀治先生をはじめ、錚々たる研究者に恵まれた環境で学びたいという想いが強く、入学を決意しました。

2017年、救急システム研究科 救急救命システム専攻(1年コース)に入学したのは、私を含め9名。消防署勤務の方もいれば、大学教授、病院に勤務する救急救命士の方もいました。社会人コースということもあり、大変だったのがスケジュール調整。月に5?8日行われる講義を皆が受講できるよう、学校側もいろいろと配慮してくださり、今となっては本当に感謝しています。私は自宅のある山梨から授業が行われる多摩キャンパスまで自動車で通いました。もちろん大変に感じることもありましたが、同期の中には京都から通学する方もいましたから、決して弱音など吐ける状況ではなかったですね(笑)。集まった同期は本当に気持ちの熱い人間ばかりで、そういった出会いに恵まれたことも、かけがえのない財産となっています。

インタビューの様子

「裏切ることはできない」。
そう思える人たちに出会えた

救急システム研究科で取り組んだ、研究内容について教えてください。

病院前救急において、医学的な部分は医師の方々が研究を重ね、進化を遂げていると感じています。しかし、それ以外の部分である「現場の状況把握」や119番通報を受け取る「通信指令員の対応」などはまだまだ研究の余地があると考えていました。そこで私が研究テーマに掲げたのは「病院前救急による生存率と通信指令員のコミュニケーション能力について」。 電話の向こうの患者さんが心肺停止状態だと分かった時、通信指令員が電話口の方に心肺蘇生法を口頭で指導。それを実施した時としなかった時で、生存率はどう変化するのか研究するのです。

こういった状況では、患者さんの生存率だけでなく、119番通報してきた電話口の方が動揺してしまいストレス障害を招く、などと想定外のケースも多々生じます。そのため思った通りの検証結果が得られない。統計解析や論文の推敲も思うように進まない…悩んでしまうことも度々ありました。しかし、そんな時でも諦めなかったのは、周りがフォローしてくれたから。論文作成にあたり、議論に付き合ってくれた同期。私の些細な相談にも、親身に耳を傾けてくれた先生たち。「この人たちを裏切ることはできない」と強く思えたことで、私は諦めずに研究に向き合い続けることができました。おかげで私は博士号まで取得することができ、2本の論文作成、そして学会発表は11回実施。大変充実した時間を過ごすことができ、大きな成果も得られたと感じています。

インタビューの様子

業務に直結した研究内容。
それが自己成長へと
つながった

国士舘大学大学院の、
どんな所に魅力を感じましたか?

消防士という仕事は、同業とのつながりを全国的に広げることができ、それがメリットでもあります。私はそれに加え、国士舘大学大学院という場所で、同業の枠を超えた横のつながりにも恵まれました。それが何よりの魅力です。特に、まだ社会人経験もなく純然たる気持ちで救命救急を学ぶ学生と出会い、想いを語り合えたことは、私にとってかなりの刺激になりました。こういった方々の存在、そして研究が、病院前救急医療の質をさらに向上させてくれると信じていますし、私自身もそこに加担、貢献できるよう働きかけていきたいと思っています。

これから学びたいという方々に
メッセージをお願いします。

社会人と大学院生の両立、と聞くと「どちらかが疎かになるのでは…」などと連想される方もいらっしゃるかも知れません。しかし私は日々の業務に直結した内容を研究対象としたことで、結果としてキャリアアップにつながった、ワンランク上に登ることができたと自負しています。大学院に通いはじめた当初は、私の行動を理解してくれなかった同僚も今では「学んでみたい」と興味を持ってくれています。いざ足を踏み入れれば、もちろん大変なことも多いですが、そんな苦労をはるかに上回るような魅力、そして出会いも待っています。是非とも多くの方々にチャレンジして欲しいと思います。

あなたにとって「国士舘大学大学院」とは?

ワンランク上の自分へと、
成長させてくれた場所

萱沼 実

Minoru Kayanuma